毎年参加していますが、2018年も品川で開催された山梨大学主催のワインセミナーに行ってきました。
今年は1週間ぐらい早目の開催でした。なので募集も少し早目になっていました。
山梨大学のワインセミナーでは、ワインのテイスティングを中心にしつつ、基礎ではありますがアカデミックな講義がセットになっています。2016年の講義とテイスティングのレポート、2017年の講義とテイスティングのレポートはこちらに書いていますので見てください!
一昨年、昨年も参加させていただいたのですが、非常に面白く、かつ、値段もリーズナブルで、とても良いので毎年参加しています。
開催要領
1.開催名 「山梨大学ワインセミナー2018」
2.開催期間 2018年10月13日(土)
3.費用 2,000円
4.会場 フクラシア品川クリスタルスクエアの3階
ビルの入り口に着くと係りの学生さんがエレベータまで案内してくれ、3Fですと教えてくれます。
3Fではセミナーの参加費用を入り口で支払って、会場に案内していただきます。
毎年13時から17時なのですが、テイスティングの時間を長めに確保するのに進行役の方が苦心されています。
これも恒例ですが、席には本日のテキストや大学案内などのパンフレットが置かれています。
本日のプログラムです。
一般の方が興味が持てそうなテーマで、科学の視点から見たワインの奥深さ、楽しさを化学式やグラフを少し使って講義をしていただけます。
最初のあいさつ
山梨大学理事の島田学長が、このセミナーは平成6年から続けていて、科学的アプローチを取っているユニークなワインセミナーで、産官学が協力して実施してセミナーを開催していて、品質向上著しい山梨県産のワインに興味を持ってほしいとおっしゃっていました。
また、山梨県ワイン酒造組合の庄内副会長は山梨県には80ワイナリーあって、79ワイナリーが組合にさんかしているとおっしゃっていました。個人的には組合に入っていない1ワイナリーが、どこなのか非常に気になってしまった。笑
それと地理的表示「山梨」が国から指定され、今年の10月末から表示も変更され、今後は山梨と表示されたワインは原産地とその品質が保証されることになるそうです。そして海外においてもテーブルワインではなく、価値の高い地理的表示付きワインとして売り出すことが可能になるとのことでした。
講義1 ブドウの香りを科学する
山梨大学 鈴木俊二 教授による講義では、ブドウ果実はなぜ香りを出すのか?ということを科学の目線で講義をしていただきました。
1.植物はなぜ香るのか
植物の生存戦略は「うごかない」ということでエネルギーを最小限にして、太陽光を利用して生き抜いてきました。
植物は一生その場所で生活しますが、動物は動き回ることで餌を得て繁栄することに成功しています。
植物は、そんな動物と「香り」というコミュニケーションのツールを利用して生存してきたそうです。
繁栄の例で言うと、蝶は植物の受粉を助けます。そしてミツバチは植物の花の香りを嗅ぎつけて、蜜を作り出します。また、果実を鳥が食べると、種などは排泄されて、別の新たな場所で育つことが出来るようになります。
このように植物は香りを使って、シグナルを送り他の生物と繁栄してきました。
2.ブドウ果実はなぜ香り物質を作り出すのか
ブドウの香りは果実の成長によって造られるものではないそうです。香り物質は果実よりも葉っぱで造られることが多いとのこと。ソーヴィニヨン・ブランの特徴香であるパッションフルーツの様な香りは、3-メルカプトヘキサノールと言い、通称3MHが起因するそうです。
では3MHは、どのようにできるかというと少し難しいのですが、環境ストレス(UV、水不足、灰色かび病)をあたえるとヘキサナール(毒性)が増え、脂肪酸を分解して→グルタチオン抱合体が出来て、システイン抱合体から3MHができるというメカニズムなんだそうです。
つまり外敵からうけたストレスを自己防衛した結果、香り物質ができのだそうです。
ブドウ果実は外的ストレスに対処した結果として出た香りを、人間がワインとして飲むと、人間のストレスまでも和らげてくれるという素晴らしい関係があるんですね!
とても面白い講義でした。
講義2 おいしさを調べる -その面白さと難しさ-
山梨大学 斉藤史恵 助教による講義では、おいしさを調べていく中での面白さや苦悩について話をしていただきました。
おいしさの要素というのは様々でどのような要素が直接的に関係するのかを特定することは非常に困難なので、持続性という切り口で研究をしているとのことでした。
時間軸から味の強度の変化を測定したりしているそうです。この研究の難しい点としては官能評価を人がすることから、人によっては香りをかぎとれないなどがあることから、評価をする人を育てるのが難しいそうです。
それと評価する人は、一日に何回もお酒を飲むことになるので、やはり限界があるというのも難しさの一つでもあるそうです。
講義では香りの付いた紙が配布され、どんな香りがするかを考えてみよう!というクイズも出されました。
私は①の試験紙は酸味のある果実、②はすっとした香りが感じられたので、ハッカ、花の香りと予想しました。
ちなみに答えは、①はグレープフルーツの様な柑橘系の香り、②は白い花の香りだったので、まあ特徴香は掴めていたのかなと思いました。ちなみに②の香りは日本人は半分ぐらいしか嗅ぎ取れないそうです。
そして、お弁当などに入っている醤油の容器(タレビン)は味覚を使って何の味かあてるクイズでした。
私の答えは、赤のキャップは少し苦みがある味、緑のキャップは塩味、ミネラルが感じられました。
正解は、赤のキャップがかつお節などに入っているイノシン酸が入っていて、緑のキャップは昆布などに入っているグルタミン酸でした。
私の回答は味の成分上は、うま味ではないので不正解なような気がします。
講義3 ワインブドウの栽培管理
山梨県果樹試験場 主任研究員 渡辺晃樹さんによる講義では、ブドウの高品質化についてお話し下さいました。
興味深かったのは、除葉といって果実の周辺の葉っぱを取り除くことによって通気性を確保して、果実への日当たりを向上させて、イソブチルメトキシピラジン(IBMP)を減少させ、ピーマン香を抑えるようにしているそうです。
講義4 ワインのテイスティング
サントリー出身の山梨県ワイン酒造組合副会長の庄内文雄さんによる講義では、テイスティングの方法を説明していただきました。お待ちかねのテイスティングです!
毎年恒例のテイスティンググラス、ミネラルウォーター、クラッカー、ティッシュ等が準備されます。
それではテイスティングです!
フジクレール・甲州スパークリング・フジッコワイナリー
瓶内2次発酵の本格的なスパークリングワインです。上代は2900円。
色は少し緑がかった黄色です。香りはパンを焦がしたような感じのニュアンスがあります。味わいはドライですが、柔らか味のある酸が特徴です。おととしのセミナーでは、フジクレールのシャルドネのスパークリングが出されていました。
フジッコワイナリーは、日本食のフードメーカーだけあって、日本の家庭の味でも合うワイン造りをしているのが特徴だとおっしゃっていました。
グレース・グリド甲州・中央葡萄酒
中央葡萄酒が造るスタンダードな甲州です。
色は淡い黄色です。香りはスワリング前はオレンジの香りが強く、スワイリングするとトロピカルフルーツのような柑橘系の香りがします。後味に少し苦みがあり、日本食にあうワインです。山菜のてんぷらと良いマリアージュを演出すると講師の先生がおっしゃっていました。
グランポレール・山梨甲州樽発酵・サッポロビール・グランポレール勝沼ワイナリー
香り成分を抽出するために早摘した葡萄と、味わいを上げるために遅摘みした葡萄を混ぜて作っているそうです。
色は淡い黄色です。香りは柑橘系の香りが強く出ています。また、樽由来の香りもほのかに香ります。
サントリージャパンプレミアム・津軽産ソーヴィニヨンブラン・サントリーワインインターナショナル
津軽産のブドウを使って、登美の丘ワイナリーで醸造しているそうです。
色は少し薄い緑色です。香りは青リンゴ、ハーブの香りがしっかりします。フレッシュでしっかりしたソーヴィニヨンブランだと思います。
山梨のベーリーA 樽熟成・蒼龍葡萄酒
蒼龍葡萄酒は、日本のワイン造りの先駆者となった高野正誠さんと土屋龍憲さんとは親戚関係にあたるそうです。
色は若いMBAによくある紫色です。香りはイチゴジャム、キャンディ香です。味わいはザ・マスカットベーリーAです。
MBAの相性が良い料理は、醤油系の味と合うようで、肉じゃが、ぶりの照り焼きが良いそうです。
シャトーメルシャン・穂坂マスカット・ベーリーA・シャトーメルシャン
シャトーメルシャンが穂坂で造ったMBAです。上代が3200円とMBAにしては中々。
昨年のセミナーではセレクテッド・ヴィンヤードを試飲しました。あれは美味しかった。。
色はレンガ色のニュアンスが出てきています。香りはジャムっぽさはかなり控えめです。味わいは果実の凝縮感と酸のバランスが取れた複雑な味わいがあります。
シャトージュン・メルロ・シャトージュン
アパレルブランドが造るワインですが、しっかりした造り手です。
色は濃い紫色です。香りはカシス感が強くあります。味わいは濃厚だけど重すぎない丁度良い口当たりです。青さとか苦みとかを感じず、美味しいメルローです。
お肉と良く合いそうですね!日本のメルローって、すごく本格化してきて最近のお気に入りです。これも美味しかった!
空き瓶の集合写真!
圧巻の空き瓶たち!いやー、美味しかった。ごちそうさま!!!
さいごに
本日、一番良かったNo.1ワインは、シャトージュン・メルロです。是非、山梨のメルロを味わってみてください。
さいごに講義いただいた先生方、お手伝いをしていた皆様、準備および運営で大変だったかと思います。本当にこのような機会を作っていただき、ありがとうございました!そして、お疲れ様でした。
また、来年も楽しみにしています。
2016年の講義とテイスティングのレポート、2017年の講義とテイスティングのレポートをこちらに書いていますので良かったら見てください!
いやー、ワインって本当に良いものですよね!さよなら、サヨナラ、さよなら!