今年も品川で開催された山梨大学主催のワインセミナーに行ってきました。
山梨大学のワインセミナーでは、ワインのテイスティングを中心にしつつ、基礎ではありますがアカデミックな講義がセットになっています。
昨年も参加させていただいたのですが、非常に面白く、かつ、値段もリーズナブルで、とても良かったので今回も参加しました。
開催要領
1.開催名 「山梨大学ワインセミナー2017」
2.開催期間 2017年10月21日(土)
3.費用 2000円
4.会場 フクラシア品川クリスタルスクエアの3階
ビルの入り口に着くと係りの方がエレベータまで案内してくれ、3Fですと教えてくれました。
3階につくと会場の案内が出ています。入り口で参加費を支払うと、係りの方が席に案内してくれます。
本日のプログラムがテレビに映されています。
席には本日のテキストや大学案内などのパンフレットが置かれています。
最初のあいさつ
山梨大学理事の早川正幸理事が、このセミナーは平成6年から続けていて、科学的アプローチを取っているワインセミナーはここだけと説明されていました。
また、大学施設でワインの研究をしている唯一の機関が山梨大学の生命科学科しかないそうです。
そして早川理事は微生物が専門で、日本を象徴する花はさくら、菊、鳥だとキジ、菌も国を代表する菌があると教えてくれました。国酒は清酒、焼酎。なんと国菌まであって、麹なんだそうです。国菌は麹だなんて全然知らなかった。笑
日本では縄文時代から菌を利用して山葡萄を土器に入れて発酵させていたのではないかという説があり、実は日本酒よりも古くから葡萄酒が作られていたのではないかと言われているそうです。
掴みの挨拶で、なるほどと感心してしまいました。
講義1「ブドウ栽培と自然環境」
山梨大学 山下裕之 准教授による講義では、テロワールとは栽培環境、自然環境をイメージするのが一般的だが、はたしてそれは真実なのか!?という視点で、自然環境がブドウ栽培に与える影響を話してくれました。
自然環境がブドウの生育に与える影響は大きく以下の6点になるそうです。
1.温度条件
2.日光条件
3.降水量
4.風
5.土壌
6.地形
自然環境がブドウの良し悪しを決めるのであれば、環境要因からワインの質を統計的に分析することで、ワインの値段を予測することが可能ではないかとプリンストン大学の経済学者オーリー・アッシェンフェルターが理論を打ち立て、以下の方程式を作り上げたそうです!!!
ワインの質=12.145 + 0.00117 × 冬の降雨 + 0.0614 × 育成期平均気温 ‐ 0.00386 × 収穫期降雨
ちなみに、ワインジャーナリストのロバートパーカーは、その方程式について「映画そのものを見ずに、役者や監督を元に映画の良しあしを評論する評論家のようだ」と切って捨てたそうです。笑
一方で、テロワールというのは、自然環境が全てではないという意見もあるそうです。
というのも、ブドウ栽培というのは、人間が一貫して自然にあらがって栽培してきた歴史があり、ボルドーのオーメドックは今では銘醸地ですが、長い歴史からみるとワイン産地としては後発地であることが分かっています。
結局、人間が自然に抗うことでしか、素晴らしい葡萄ができないということを、ロジェ・ディオンは主張したそうです。
「ボルドーワインの偉大さは、ボルドー人たちの政治的手腕によって獲得された面が大きいことは否定できない」という意見もあることから、自然環境優位の地理的決定論で、ブドウの良し悪しは語れないのではないか、ということでした。
テロワールの概念には様々な解釈があり、自然環境やブドウを栽培する人も含めたり、ある人は酵母も含めたり、技術やお金も含まれると定義する人がいる為、人によって概念がかなり異なっているというのが、よく分かる講義でした。
講義2「ワインの美味しさは測れるのか」
山梨大学 斉藤史恵 助教による講義では、おいしさを感じる仕組み、ワインの美味しさを作る成分、味を測る研究について話をしていただきました。
1.おいしさを感じる仕組み
おいしさを感じる仕組みは、味覚だけでなく人間の五感に訴えかける以下のようなものが影響している。
聴覚 ボトルの栓を開ける音、グラスに注ぐ音 等
視覚 色の鮮やかさ、色の透明度 等
嗅覚 フルーティー 等
味覚 酸味、甘味、渋味 等
触覚 冷たい、滑らか 等
人間の味覚は、味を受け止める味蕾という受容体が5種類持っていても、人によって同じワインでも美味しさの判断基準が異なるため受け止め方が全然違うことがあることが分かっている。
2.ワインの美味しさを作る成分
ワインの成分の98%は水とエタノールで構成され、残りの2%がワインの違いになってくる。
また、ワインのアロマは、第一アロマは葡萄に由来する香りで、第二アロマは醸造に由来する香り、第三アロマは熟成に由来する香りなんだそうです。
3.味を測る研究
斉藤先生は味を測る研究を行っているが、人によって価値基準や判断基準が違うことから、方程式を探し出すことは非常に難しいとおっしゃっていました。
しかし、誰もが美味しいと感じてしまう黄金比っていうものはあるのではないかと思って日々研究をされているとお話しされていました。
黄金比を発見していただけることを期待したいと思います!!
講義3「山梨のワイン」
山梨県産業技術センターワイン技術部長 恩田匠さんによる講義では、山梨のワインの現状をお話し下さいました。
過去15年のデータから、国内の金賞・銀賞を獲得したワインを製造しているメーカーをランキング形式にして見せていただきました。
第1位 シャートメルシャン
第2位 マンズワイン
第3位 サントリーワインインターナショナル
第4位 サッポロワイン
第5位 本坊酒造 山梨マルスワイナリー
第6位 北海道ワイン
第7位 フジッコワイナリー
第8位 井筒ワイン
第9位 中央葡萄酒井筒ワイン
第10位 丸藤葡萄酒工業
本講義の次は、ワインのテイスティングだっただけに、予定していたお話を飛ばしたり、コンパクトに話たりと、ポイントを絞った説明で、高いプレゼンスキルを見たような気がします。笑
講義4「ワインのテイスティング」
マンズワイン出身の山梨県ワイン酒造組合副会長の松本信彦氏による講義では、テイスティングの方法を説明していただきました。
そしてお待ちかねのテイスティングです!
昨年と同様、テイスティンググラス、ミネラルウォーター、クラッカー、ティッシュ等が準備されます。
マンズワイン・スパークリング・酵母の泡・ロゼ・セック
鮮やかな色合いと細かいけどしっかりした泡。マスカット・ベーリーAを使ったロゼ・スパークリング。香りはあんず、もも、いちごのニュアンスを感じました。セニエ法で作っているそうです。
原茂ワイン・ハラモ・甲州・シュールリー
香りはグレープフルーツ、洋梨、白桃の華やかで甘いです。酸味が弱く、ほのかに舌に残る渋みが、このワインのボディを作っています。
[ ハラモ 甲州シュールリー ]原茂ワイン 白ワイン 甲州ワイン 日本ワイン[sur]
盛田甲州ワイナリー・シャンモリ・フィエルテ・プライベートリザーブ・甲州・バレル・ファーメンテッド
樽香がして、クラシカルな甲州ワインを継承しつつ洗練した味わいです。酸味もありますが、なにしろバランスが良いです。余韻も長く秀逸な甲州ワインでした。
シャトレーゼ・勝沼ソーヴィニヨン・ブラン
ナイトハーベストで収穫したソーヴィニヨン・ブランは、柑橘系の香りと、草っぽい香りが印象的です。酸味、苦みがありつつ、トロピカルなワインです。テイスティングの講師の松本さんは、今年は賞を取れなかったが中々良い出来栄えとおっしゃっていました。
シャトー・メルシャン 穂坂マスカット・ベーリーA・セレクテッド・ヴィンヤード
穂坂地区のマスカット・ベーリーAを使用した、果実の凝縮感と力強い酸を持ち複雑で上質なワインでした。マスカット・ベーリーAのキャンディー香は控え目で、今まで飲んだマスカット・ベーリーAで一番かもしれません!バニラ香やベリー感があって驚きました!2年の樽熟成を経て売り出されたそうです。メルシャンの醸造技術が光る一本でした。
フジッコワイナリー・フジクレール・メルロー隼山
カシス、ブラックベリーの香りがしてフルーティーなワインです。柔らかい味わいでしみじみと美味しいなと思わせる一本です。
サントリー登美の丘ワイナリー・登美の丘・赤
先日もテイスティングコメントをアップしましたがはじめはうっすら、その後果実味がパッと広がり、しっかりとタンニンやスパイシーが感じられ、果実味を主としてそれを取り巻くような一体感が印象的でした。
空き瓶の集合写真!
圧巻の空き瓶たち!
いやー、美味しかった!!!
さいごに
本日、一番良かったNo.1ワインは、シャトー・メルシャン 穂坂マスカット・ベーリーA・セレクテッド・ヴィンヤードです。ヌーボーも良かったですが、さすがメルシャンです。マスカット・ベーリーAであって、マスカット・ベーリーAでない複雑さは秀逸です!是非、味わってみてください。
さいごに講義いただいた先生方、お手伝いをしていた皆様、準備および運営で大変だったかと思います。本当にこのような機会を作っていただき、ありがとうございました!そして、お疲れ様でした。
また、来年も楽しみにしています。
昨年に参加した時のレポートを書いていますので良かったら見てください!
いやー、ワインって本当に良いものですよね!さよなら、サヨナラ、さよなら!